重量級アスリートのスーツは、既製品の「大きいサイズ」を選ぶほど太って見えます。結論から言えば、重量級の体型に必要なのは大きさではなく、胸囲と腹囲の差(ドロップ)・首回り・肩の厚みを別々に設計し直すことです。相撲、柔道・レスリングの重量級、投擲、ラグビーのフォワード、ウエイトリフティングなど、筋肉の上に厚みが乗る体型は、市販のサイズ表記のどこにも当てはまりません。この記事では、重量級体型のスーツで失敗しないための7つの採寸ポイントを、稲沢の店頭での実例とともに解説します。
重量級アスリートのスーツが既製品で合わない理由
既製品のスーツは、胸囲を基準にして他の寸法を比例で決めています。重量級の体型は、この比例から大きく外れます。
具体的には、胸囲98cmの人と胸囲118cmの人で、首回りや腹囲が同じ比率で増えるわけではありません。重量級の方は胸囲に対して首が太く、腹囲が厚く、一方で身長はそれほど高くないというケースが多くあります。すると「胸囲に合わせると着丈と肩幅が余る」「肩に合わせると腹が留まらない」という状態になり、どのサイズを選んでも必ずどこかが破綻します。
サイズ表記の仕組みについてはスーツのドロップとは?胸囲とウエストの差で選ぶサイズの正解で詳しく解説していますが、重量級体型はドロップ4以下、つまり既製品の規格の外側に出ることがほとんどです。
重量級体型で必ず押さえたい7つの採寸ポイント
1. 首回り
重量級の方はまず首で詰まります。首回り45cmを超えると既製シャツの選択肢はほぼ消え、ジャケットの襟も首の太さに押されて浮きます。ジャケット側では襟のカーブと後ろ襟の高さを、シャツ側では首回りと襟腰の高さを個別に決めます。首が太い人のスーツ選びも併せてご覧ください。
2. 胸囲と腹囲の差
胸と腹の差が小さい体型は、ウエストを絞りすぎるとボタン位置で生地が引かれ、X字のシワが出ます。絞る位置を通常より下げ、絞り量を抑えるのが正解です。
3. 肩の厚み(肩傾斜と肩先の丸み)
三角筋と僧帽筋が厚い体型は、肩が水平に近づきます。標準の肩傾斜だと肩の途中に段差が出るため、肩線を水平寄りに起こし、パッドは薄くして肩そのものの形を活かします。
4. 背幅とアームホール
背中が厚い方はアームホールが小さいと腕が前に出せません。アームホールは高く、かつ大きめに取り、袖付けを前振りにすると可動域が確保できます。
5. 前身頃の「くり」と着丈
腹に厚みがある場合、前身頃が短く見えてボタンを留めると裾が跳ね上がります。前身頃の丈を後ろより長めに取る「前下がり」を通常より大きく設定します。
6. 太ももとヒップ
重量級の方は太ももとヒップの実寸が大きく、ウエストに合わせると下半身が入りません。太ももの周囲を独立して測り、股上を深めに取ることで座ったときの突っ張りも防げます。太ももが太い人のスラックス選びが参考になります。
7. 生地の重さと伸縮性
厚みのある体型に重い生地を使うと、さらに大きく見えます。目付280g前後までに抑え、緯糸にストレッチを入れると動きやすさと見た目の軽さを両立できます。
大きく見せない色・柄・仕様の選び方
重量級アスリートのスーツで最も多い失敗が、体を隠そうとして大きめ・濃色・無地を選び、結果的に「ただ大きい人」に見えてしまうことです。
実際に効果があるのは次の3つです。第一に、縦の視線を作ること。ピークドラペルや幅のあるラペルは、胸の面積を縦に割って見せます。第二に、光沢を抑えること。艶のある生地は面の広さを強調するため、マットな杢調やヘリンボーンのほうが体積が目立ちません。第三に、Vゾーンを深く取ること。ボタン位置を少し下げると縦線が伸び、上半身が締まって見えます。
色は濃紺・チャコールが基本ですが、真っ黒は面が重く出るため避けたほうが無難です。柄は細すぎるストライプだと生地の伸びで歪んで見えるので、2cm前後のピッチが扱いやすくなります。
ご自身の体型がどの範囲に入るかは、実際に測ってみないと判断がつきません。INFINITY TAILORでは、採寸だけのご相談も承っています。
▶ 重量級体型の採寸を相談する(無料・INFINITY TAILOR公式)
競技別に変わる「厚みの出る場所」
同じ重量級でも、競技によって厚みが乗る場所は違います。当店で採寸していて明確に傾向が出るのは次の通りです。
相撲・柔道の重量級は、首・僧帽筋・前腕・腹囲が同時に大きくなります。組み手で腕を前に出す動作が多いため、アームホールと背幅に余裕が要ります。投擲選手は片側の肩と背中に厚みが偏ることが多く、左右別採寸の効果が最も出やすいタイプです。ラグビーのフォワードは首と太ももが突出し、上半身は意外と絞れている方もいます。ウエイトリフティング・パワーリフティングは臀部と太ももが極端に大きく、スラックス側の設計が勝負になります。詳しくはパワーリフター体型のスーツ選びをご覧ください。
現役引退・減量を見込んだ一着の考え方
重量級の競技者から必ずいただくのが「引退したら体が変わるので作るか迷う」という相談です。
実際、競技を離れると1年で10kg以上落ちる方も珍しくありません。そこで当店では、ウエストの縫い代を通常より多く残す、スラックスの脇にアジャスターを仕込む、ジャケットの背中心にも縫い代を確保する、という3点をご提案しています。この仕様なら、後からウエストで6cm前後、ジャケットの胴回りで4cm前後を詰められます。
反対に、まだ増量の予定がある方には、詰めるのではなく出せる方向に縫い代を残します。作る時点で「これからどちらに動くか」を伺うのは、重量級の方の採寸では必ず行っている確認です。フルオーダースーツは¥59,800(税込)からご用意しています。
よくある質問
Q. 体重が三桁でもオーダーできますか?
できます。オーダーは既製品のサイズ表に縛られないため、胸囲・腹囲・首回りをそれぞれの実寸で作ります。むしろ規格から外れる体型ほど、オーダーとの差が大きく出ます。
Q. 大きいサイズ専門店の既製品とどちらがいいですか?
大きいサイズの既製品は「全体を等倍で大きくした」設計のため、肩幅や着丈まで一緒に大きくなります。首だけ太い、太ももだけ太いといった部分的な差には対応しきれません。部位ごとに差がある方はオーダーが向いています。
Q. 動きやすさは確保できますか?
アームホールの高さと形、背中のゆとりの入れ方、ストレッチ素材の選択でかなり変わります。当店は伸縮性のある素材を多く扱っており、肩と背中が動く仕様をご提案できます。詳しくはストレッチスーツとは?疲れにくい理由と後悔しない選び方をご覧ください。
