スキー・スノーボード体型のスーツは、既製品ではなくオーダーで作るのが正解です。理由は単純で、太ももとお尻が発達している一方で上半身は比較的細いという、既製スーツの想定外の体型だからです。スラックスに合わせてサイズを上げるとジャケットが大きく、ジャケットに合わせるとスラックスが穿けない。この板挟みは、上下を別々の寸法で仕立てることでしか解決しません。
この記事では、愛知県稲沢市のオーダースーツ専門店として実際にウィンタースポーツ経験者の採寸を行ってきた立場から、スキー・スノーボード体型のスーツで押さえるべき採寸のポイントを解説します。
スキー・スノーボード体型のスーツが合わない3つの理由
アルペンスキーやスノーボードのアルペン種目は、ターン中ずっと中腰の姿勢を保ち続ける競技です。その結果、大腿四頭筋・ハムストリング・大殿筋が集中的に発達します。一方で上半身は、ストックワークやバランス保持に使う程度で、ウエイトトレーニングを積んだ選手でなければ胸囲や肩幅はそれほど大きくなりません。
既製スーツが合わない理由は、次の3つに整理できます。
1. 上下のサイズが1〜2段階ずれる
既製スーツはジャケットとスラックスの寸法が連動しています。ウエスト76cmのスーツならワタリ(太もも周り)は約30cm前後で設計されており、これはあくまで一般的な体型を前提とした数値です。スキー・スノーボード経験者はウエストが細いままワタリだけが大きいため、この連動が成立しません。
2. ヒップとワタリの張りでスラックスの横ジワが消えない
穿けたとしても、太ももの外側に斜めのシワが入り、ポケットが開いてしまいます。これは生地が引っ張られている合図で、見た目が悪いだけでなく、股上や膝裏の縫い目に負荷がかかって傷みやすくなります。
3. 前傾姿勢のクセが着姿に出る
長年滑っている方は、立っているときも骨盤がわずかに前傾し、重心が母趾球寄りになっている場合があります。この姿勢だとジャケットの前身頃が浮き、後ろ裾が下がって見えます。既製品では補正できない部分です。
太ももとお尻の張り|スラックスで最優先すべき採寸
スキー・スノーボード体型のスーツで最も重要なのは、スラックスのワタリとヒップです。ここが窮屈だと、他をどれだけ整えても着心地が破綻します。
採寸で見るのは次の4項目です。
- ワタリ幅:太ももの最も太い位置の周径から割り出します。ゆとりは2〜4cmが目安ですが、筋肉の張りが強い方は座ったときの膨らみを考えて多めに取ります。
- ヒップ:お尻の一番高い位置。スクワット由来の張り出しがある方は、立位だけでなく軽くしゃがんだ状態も確認します。
- 股上:ヒップが大きい方は股上を浅くすると生地が食い込みます。標準よりわずかに深く取ると、腰回りのシワが減ります。
- 膝下のテーパード:ワタリを確保したまま裾に向けて絞ることで、太ももの太さが目立たなくなります。ここを絞らないと全体が寸胴に見えます。
太もも周りの具体的な対処法は太ももが太い人のスラックス選び|パツパツを防ぐ採寸のコツで、お尻の張り出しについてはお尻が大きい人のスラックス選び方で、それぞれ詳しく解説しています。
上半身は意外と細い|ジャケットのサイズ選びの落とし穴
ここがスキー・スノーボード体型ならではの難所です。下半身の太さに引きずられて大きいサイズを選ぶと、ジャケットが完全に余ります。
具体的には、肩線が肩先から落ちて袖山にシワが出る、ウエストが絞れずに箱型のシルエットになる、着丈が長すぎて脚が短く見える、といった状態です。せっかく鍛えた下半身が、だぶついた上着によって「ただ体格がいい人」に見えてしまいます。
オーダーであれば、ジャケットは肩幅と胸囲を実寸に合わせてやや細めに、スラックスはワタリを確保して、という上下で別方向の調整ができます。この「上は細く、下は太く」を1着の中で成立させられるのが、オーダーを選ぶ最大の理由です。
ウエストの絞りは、胸囲との差が大きいほどV字のシルエットが強調されます。ただしスキー・スノーボード体型の場合、胸囲差を無理に作ろうとすると窮屈になるので、絞りは控えめにして着丈と肩幅で全体のバランスを整えるほうが自然に仕上がります。
下半身の張りに悩む方のスーツづくりは、当店の得意分野です。ワタリやヒップの寸法でお困りでしたら、まずは一度ご相談ください。
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既製スーツで失敗しやすい3つの選び方
店頭でよく伺うのが、次のような失敗談です。
ワンサイズ上げて全体を大きくした:スラックスは穿けるようになりますが、ジャケットとウエストが余ります。上着だけ詰めても、肩幅と着丈は直せる範囲が限られています。
ストレッチ性のない生地を選んだ:太ももが太い方ほど、生地の伸びが着心地に直結します。通常のウール100%だと、階段や車の乗り降りで生地が張り、膝が出やすくなります。
スラックスだけ後から買い足した:色味と生地が微妙に違い、上下で並べたときに違和感が出ます。同じ生地でもう1本作るツーパンツの考え方のほうが、結果的に長持ちします。
稲沢の店頭で実際に確認しているチェックポイント
採寸では数字を測るだけでなく、動いていただいたときの変化を見ています。スキー・スノーボード経験者の方について、当店が特に注意して見ているのは次の3点です。
1. しゃがんだときのワタリの膨らみ
立位の数値だけで作ると、椅子に座った瞬間に太ももが張ります。実際に軽く膝を曲げていただき、そのときの太もも周りの変化を確認したうえでゆとりを決めます。競技歴が長い方ほど、この差が大きく出ます。
2. 左右の脚の太さの差
スノーボードは前脚と後脚の役割が違うため、左右で太さが異なる方が少なくありません。差が1cm以上ある場合は、太いほうに合わせて両脚を作ると細いほう側が余ります。左右で別寸法にするか、中間で取って裾のテーパードで調整するかを、その場でご相談しながら決めています。
3. 姿勢のクセ
骨盤の前傾が強い方は、後ろ身頃の丈をわずかに伸ばす補正を入れます。数ミリの調整ですが、これがあるかないかで背中のシワの出方が変わります。左右差や姿勢の補正については体の左右差とスーツでも触れています。
生地選び|ストレッチ素材で動きやすさを確保する
下半身が発達している方には、ポリウレタンを2〜3%混紡したストレッチウールをおすすめしています。数字だけ見ると小さいですが、太ももが動く方向に生地が追従するため、突っ張り感がはっきり減ります。
色は、太さを目立たせたくない場合はネイビーやチャコールグレーの無地から。ストライプを入れるなら、間隔の狭いピンストライプが縦のラインを強調してくれます。逆に、明るいグレーや大きめのチェックは面積が広く見えるため、下半身が大きい体型では膨張して見えやすくなります。
季節については、秋冬物の仕立ては8〜9月に動き始めるのが余裕をもったスケジュールです。シーズンインしてからでは、着たい時期に間に合わないこともあります。
よくある質問
Q. 現役を引退して脚が細くなったら、着られなくなりませんか?
A. スラックスのワタリとウエストは、ある程度の範囲で詰める調整が可能です。ただし極端に細くすると、股上とヒップのバランスが崩れて元のシルエットとは変わります。数年単位で体型が変わる予定がある方には、あらかじめ縫い代を多めに残す仕立てをご案内しています。
Q. スラックスだけオーダーすることはできますか?
A. 可能です。ジャケットは既製品で問題ないけれどスラックスだけが合わない、という方は実際に多くいらっしゃいます。手持ちのジャケットに合わせて色味と生地感を選ぶこともできますので、現物をお持ちいただくのが確実です。
Q. スキーウェアのような伸びる素材でスーツは作れますか?
A. ウェアと同等の伸縮性はスーツ生地では出せませんが、ストレッチ混の生地であればかなり動きやすくなります。見た目はふつうのウールと変わらないため、ビジネスの場でも違和感はありません。ご来店時に実際の生地を伸ばして確かめていただけます。
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INFINITY TAILORは愛知県稲沢市のオーダースーツ専門店です。フルオーダースーツは¥59,800(税込)〜。下半身の張りや左右差など、既製品で解決しにくい体型のご相談を数多くいただいています。
