スラックスのタックは、体型と用途で選ぶべきものが決まります。結論から言えば、太ももやヒップが発達している人は1タックまたは2タック、標準体型でシャープな印象を優先したい人はノータックが正解です。流行だけで選ぶと、可動域が足りずに横じわが出たり、逆にだぶついて野暮ったく見えたりします。
タックとは、スラックスのウエスト前面に入れる折りひだのことです。ここに生地を折り込むことで、腰まわりから太ももにかけてのゆとりが生まれます。愛知県稲沢市のオーダースーツ専門店として日々採寸をしている立場から、スラックスのタックの種類と選び分けの基準を解説します。
スラックスのタックは3種類|ノータック・1タック・2タック
まずは基本の3種類を整理します。
- ノータック(プレーンフロント):折りひだなし。前面がフラットで最もすっきり見える。腰まわりのゆとりは最小。
- 1タック:折りひだが片側に1本。すっきり感とゆとりのバランスが良く、現在の主流。
- 2タック:折りひだが片側に2本。ゆとりが最も大きく、クラシックで重厚な印象になる。
タックの本数が増えるほど腰まわりの生地量が増え、動きやすくなる一方、シルエットは丸みを帯びます。この「可動域」と「シャープさ」のトレードオフが、スラックスのタック選びの本質です。
タックの向きには「順タック」と「逆タック」がある
本数と同じくらい見た目を左右するのが、ひだの向きです。
順タック(インプリーツ)は、ひだが体の中心側(前中心方向)に向かって折られたものです。腰まわりに沿ってひだが伏せられるため、開きにくく、ノータックに近いすっきりした見え方になります。日本で「タック入り」として一般的なのはこちらです。
逆タック(アウトプリーツ)は、ひだが外側(脇方向)に向かって折られたものです。イギリスやイタリアのクラシックな仕立てに多く、ひだが立体的に見えるため、上品でドレッシーな印象になります。ただし腰まわりに厚みが出やすいので、体格の良い方が選ぶと膨張して見えることがあります。
下半身が発達している方には、基本的に順タックをおすすめしています。同じゆとり量でも、外に膨らんで見えないためです。
体型別|スラックスのタックの選び方
太もも・ヒップが発達している人 → 1タックまたは2タック
スクワットや自転車競技、球技などで大腿部が太い方は、ノータックにすると腰まわりの生地量が足りず、ポケットが開いたり、腿の付け根に斜めのシワが集中したりします。1タックを入れるだけで、ウエストを細く保ったままワタリのゆとりを確保できます。可動域が特に必要な方は2タックが快適です。関連して太ももが太い人のスラックスもご覧ください。
標準〜細身の人 → ノータックまたは1タック
腰まわりに余分な厚みがない方は、ノータックの端正なシルエットが最も似合います。ただし、着席時間が長い職種やしゃがむ動作が多い方は、1タックにしておくと日常の快適さが大きく変わります。
お腹まわりに厚みがある人 → 1タック(順タック)
意外に思われますが、この体型でノータックを選ぶと、前面の生地が突っ張って腹部の丸みを強調してしまいます。1タックを入れて生地を落とすほうが、縦のラインが出て腹部が目立ちません。2タックにするとボリュームが出すぎるため、1本が適量です。
背が低い人 → ノータックまたは1タック
タックのひだは水平方向の情報を増やすため、脚を短く見せる方向に働きます。低身長の方は本数を抑え、股上をやや浅めにして脚長効果を優先するのが定石です。
タックの本数と向きは、実際に穿いて動いてみないと判断が難しい部分です。▶ 体型に合うタックを店頭で確かめてみませんか(無料相談はこちら)
稲沢の店頭で見ている「タックが開くかどうか」の判断基準
当店でスラックスのタックを決めるとき、必ず確認しているのが直立した状態でタックのひだが自然に閉じているかです。立った時点でひだが開いてしまっているスラックスは、腰まわりの寸法が足りていないサインで、着席するとさらに大きく開いて見た目が崩れます。逆に、ひだが深く沈み込んで生地が余っている場合は、ゆとりの取りすぎです。
もうひとつ、判断が分かれるポイントとして「腸骨と大転子の張り出し」を見ています。骨盤が横に広い方は、ヒップの数値が標準的でもノータックだと脇に突っ張りが出ます。数値だけで判断するとノータックで足りるように見えるのに、実際に穿くと合わない典型例です。こうした方には数値上の必要量より1タック分の余裕を足しています。
また、ここ数年はノータックを希望される方が非常に多いのですが、トレーニングを続けている方には試着段階で1タックとの穿き比べをお願いしています。見た目の差は思ったより小さく、快適さの差は大きい、という感想をいただくことがほとんどです。
タックと相性の良いディテール
タックを入れる場合、他のディテールとの組み合わせで仕上がりが変わります。
ポケットの向き:タック入りには縦ポケットが相性良好です。斜めポケットはタックのひだと干渉して、口が開きやすくなります。
裾の始末:タック入りのスラックスは、裾をダブル(折り返し)にすると重量が加わり、ひだが縦に落ち着いてきれいに見えます。ノータックならシングルのほうが軽快です。
生地:ハリのある生地はひだの形が保たれ、柔らかい生地はひだが流れて自然な印象になります。ストレッチ素材を使う場合、タックがなくてもある程度の可動域が確保できるため、本数を1本減らす判断もできます。詳しくはストレッチ素材のオーダースーツをご覧ください。
なお、スリーピースで仕立てる場合はベストで腰まわりが隠れるため、タックの見え方はあまり気にせず快適性を優先して構いません。スリーピーススーツの選び方も参考になります。
よくある質問
Q. ノータックとタック入り、今の流行はどちらですか?
ここ10年ほどはノータックが優勢でしたが、近年はクラシック回帰の流れで1タックが再び増えています。ただし流行の振れ幅よりも体型との相性のほうが仕上がりへの影響は大きいため、まず体型で決め、その範囲内で好みを反映させることをおすすめします。
Q. 後からタックを入れたり外したりできますか?
基本的にできません。タックはウエスト前面の生地の裁断量そのものが変わるため、縫製後の変更は構造上困難です。仕立ての段階で決める必要があります。
Q. 1タックにすると太って見えませんか?
順タックを選び、ワタリから裾にかけてテーパードをかければ、ノータックとの見た目の差はごくわずかです。むしろ腰まわりの突っ張りが消えることで、全体のシルエットが整って見えるケースのほうが多いです。
