スーツの値札にある「A5」「YA6」「BB4」といった表記の意味が分からないまま、なんとなく試着で選んでいる方は多いと思います。結論から言えば、スーツのサイズ表記はアルファベットが「胸囲とウエストの差」、数字が「身長」を表しています。この2つを読めるようになると、店頭で試着すべき候補が一気に絞れます。ただし、この表記に自分の体型が当てはまらない方も一定数いて、その場合は既製品では原理的に合いません。この記事では、スーツのサイズ表記の読み方、自分の区分の調べ方、そして表記から外れる体型の見分け方を、愛知県稲沢市で採寸をしている立場から解説します。
スーツのサイズ表記はアルファベット+数字で読む
日本の既製スーツで使われるサイズ表記は、JIS規格をもとにした体型区分です。構造はとてもシンプルで、アルファベットが体型(胸囲とウエストの差=ドロップ値)、数字が身長を示します。
たとえば「A5」であれば、A体型で身長175cm前後という意味です。数字は1から順に身長5cm刻みで上がっていき、一般的な目安は次の通りです。
- 3 … 身長165cm前後
- 4 … 身長170cm前後
- 5 … 身長175cm前後
- 6 … 身長180cm前後
- 7 … 身長185cm前後
まず自分の身長から数字を決め、次にアルファベットを選ぶ。この順番で考えると迷いません。
Y体・A体・AB体・BB体の違いはドロップ値
アルファベットは、胸囲からウエストを引いた差(ドロップ値)で決まります。おおよその区分は次の通りです。
- Y体:ドロップ約16。胸囲に対してウエストが細い、いわゆる細身の体型。
- YA体:ドロップ約14。Y体とA体の中間。
- A体:ドロップ約12。日本人男性の標準とされ、既製品の在庫が最も豊富です。
- AB体:ドロップ約8。ウエストにやや厚みがある体型。
- B体・BB体:ドロップ約6〜4。胸囲とウエストの差が小さい、がっしりした体型。
注意したいのは、アルファベットは「太っている・痩せている」を表すものではないという点です。あくまで胸とウエストの差の話なので、同じ体重でもトレーニングをしている方はY体寄り、そうでない方はAB体寄りになります。BB体だから太い、という理解は誤りです。
自分のサイズ区分を調べる手順
ご自宅でも次の3ステップでおおよその見当がつきます。
- 1. 胸囲を測る:脇の下を通し、胸の一番高い位置でメジャーを水平に一周させます。息は自然に吐いた状態で。
- 2. ウエストを測る:おへその少し上、胴の一番細い位置を測ります。お腹を引っ込めないことが大切です。
- 3. 差を計算する:胸囲からウエストを引いた数字が、上の区分のどこに入るかを確認します。
たとえば胸囲98cm・ウエスト86cmなら差は12でA体、胸囲104cm・ウエスト82cmなら差は22となり、Y体よりさらに外側ということになります。
サイズ表記から外れる体型がある
ここが実務上いちばん重要な点です。既製スーツの体型区分はドロップ4〜16の範囲しか用意されていません。差が16を超える方は、どの表記を選んでも該当しないのです。
トレーニングを継続している方や競技経験のある方を採寸すると、ドロップ20を超えることは珍しくありません。この場合、胸に合わせればウエストが10cm以上余り、ウエストに合わせれば胸がまったく入らない、という状態になります。これは選び方が悪いのではなく、既製品の想定に体型が入っていないだけです。詳しくは逆三角形体型のスーツ選びで解説しています。
同じことは身長側にも起きます。身長は数字に当てはまっても、腕が長い・胴が短いといった部分的なズレは表記では拾えません。サイズ表記はあくまで胴体の2次元的な目安であり、立体的な形は表現していないと理解しておくと判断を誤りません。
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サイズ表記が合っていても「合わない」ときに見る場所
表記上は正しいサイズなのにしっくりこない場合、確認すべきは次の4か所です。
- 肩幅:肩先の縫い目が肩の骨の先端に乗っているか。ここは後から直せません。
- 背中:腕を前に回したときに突っ張らないか。突っ張るなら背幅が不足しています。
- Vゾーン:ボタンを留めて胸元が浮かないか。浮くなら胸の厚みに前身頃が足りていません。
- 袖丈と着丈:この2つはお直しで調整できます。基準はスーツの袖丈と着丈の正解をご覧ください。
前の3つが合っていないなら、そのサイズは表記が合っていても体に合っていません。
稲沢の店頭で実際にあるやり取りと、判断が分かれる点
採寸をしていると、「ずっとA体だと思っていた」とおっしゃる方が、測ってみるとYA体やY体だったというケースが本当によくあります。多くの場合、A体の在庫が豊富で試着しやすいため、なんとなくA体を着続けてきたというのが実情です。ウエストが余っていても、ベルトで締めれば着られてしまうため気づきにくいのです。
判断が分かれるのは体重が増減しやすい方の基準をどこに置くかです。増量期と減量期で胸囲やウエストが数cm動く方の場合、どの時点の数字で作るかによって仕上がりが変わります。年間を通して着用頻度が高い時期の体型に合わせるのが基本ですが、式典など特定の日のために作るのであれば、その日の体型を優先します。ここは目的を伺わないと決められません。
もう一つは「今の見え方」と「数字」が食い違うときです。数値上はAB体でも、姿勢が反り気味の方は前身頃が持ち上がるため、AB体の型紙では前が浮きます。この場合、数字ではなく実際の立ち姿を見て補正を入れます。メジャーの数字だけでスーツは決まらない、というのが日々採寸をしていての実感です。オーダーコートを作る際も、ジャケットの上に重ねる前提で同じ確認をします。
よくある質問
Q. Y体とA体はどちらが痩せているのですか?
どちらが痩せているかを表す区分ではありません。Y体は胸囲とウエストの差が大きい体型、A体はその差が標準的な体型という意味です。したがって、胸板が厚くウエストが締まっている方は、体重が重くてもY体寄りになります。体重や太さではなく「差」を見る指標だと覚えてください。
Q. サイズ表記が同じなら、どのブランドでも同じサイズ感ですか?
いいえ、同じ表記でもブランドによってかなり違います。JIS規格は体型区分の基準であって、実際の縫製寸法まで統一しているわけではありません。ブランドごとにゆとりの取り方やシルエットの設計が異なるため、表記はあくまで試着の出発点として使い、最終判断は必ず試着で行ってください。
Q. どの区分にも当てはまらない場合はどうすればいいですか?
オーダーで作るのが最も確実です。オーダーであれば胸囲・ウエスト・肩幅・背幅をそれぞれ独立して指定できるため、ドロップ値がいくつであっても対応できます。既製品で無理に合わせようとすると、肩か胸かウエストのいずれかを必ず妥協することになり、着心地と見た目の両方が犠牲になります。
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