卓球体型のスーツは、前腕・体幹・下半身の3か所を個別に補正できるオーダーが正解です。卓球は片側の腕を集中的に使い、低い重心のまま左右へ動き続ける競技のため、既製品のように胸囲ひとつでサイズを決めると、袖が突っ張るのにウエストは余るというちぐはぐな状態になりやすいからです。
実際に採寸をしていると、卓球経験者の体は「見た目の細さ」と「実寸」が最も食い違う競技のひとつだと感じます。立ち姿は標準体型に見えても、前腕・ふくらはぎ・殿部の実寸が既製品の想定を超えていることが珍しくありません。この記事では、卓球体型のスーツで押さえるべき採寸ポイントを、店頭で実際に判断が分かれる箇所まで含めて解説します。
卓球体型のスーツが既製品で合わない3つの理由
卓球は「上半身の競技」だと思われがちですが、体づくりの結果として現れるシルエットはかなり特殊です。既製スーツが合わない原因は、大きく次の3つに整理できます。
- 利き腕側だけが太い:ラケットを持つ側の前腕・上腕・肩まわりが反対側より発達し、左右で袖の余り方が変わる。
- 胸囲の割に肩甲骨まわりが厚い:バックスイングとブロックの反復で背中側に厚みが出るため、正面から見た細さと背面のボリュームが一致しない。
- 下半身が想像以上に太い:低い重心を保つフットワークで大腿四頭筋・臀部・ふくらはぎが発達し、ウエストサイズで選んだスラックスが太ももで止まる。
既製スーツはこの3つを「胸囲とウエストの差(ドロップ)」という1本の数値だけで処理します。だから、どのサイズを試着しても一長一短になるのです。サイズ表記の考え方についてはスーツのドロップとは?胸囲とウエストの差で選ぶサイズの正解もあわせて確認してください。
卓球体型のスーツで最優先すべきは「前腕と袖幅」
卓球体型のスーツで最初に決めたいのは、袖の太さです。多くの競技では上腕(力こぶ側)が課題になりますが、卓球は前腕の発達が目立つのが特徴で、しかも上腕はそこまで太くないケースが多い。つまり、袖口に近いほど余裕が必要という、一般的なスーツの設計とは逆の要求が出ます。
ここで既製品を選ぶと、袖口を太さに合わせた結果、上腕から肘にかけて袖全体が寸胴になり、腕が短く見えてしまいます。オーダーであれば、上腕の細さを保ったまま肘から下だけを広げる、いわゆる「袖のテーパード調整」が可能です。
また、袖丈は左右で分けて指定するのが基本です。利き腕側は肩が前に入りやすく、同じ寸法で作ると袖口が長く見えます。腕まわりの補正全般については腕が太い人のスーツ|袖がパツパツになる原因と7つの対策で詳しく解説しています。
体幹と背中の厚みはジャケットの「ゆき」で受け止める
卓球は体幹を固定したまま上半身をひねる動作の連続です。その結果、脇の下から広背筋にかけての厚みが増し、腕を前に出したときにジャケットの背中が引っ張られます。座った状態や、パソコンに向かったときに首まわりが浮く感覚があれば、ほぼこの部分が原因です。
対処としては、背幅を広げるだけでは不十分で、袖付け位置(アームホール)を少し前に振る「前振り」の量を増やすと、腕を前に出したときの突っ張りが大きく減ります。ただし前振りを強くしすぎると、直立時に袖のシワが目立つため、どこまで振るかは普段の姿勢を見ながら判断します。
もうひとつ、卓球経験者は前傾姿勢が癖になっていることが多く、そのままの姿勢で採寸すると着丈が短く出ます。立位で測る値と、構えに近い姿勢の値を両方確認しておくと失敗が減ります。
ご自身の体でどこまで補正が必要か迷う場合は、一度実物を見ながら相談するのが確実です。INFINITY TAILORへの無料相談はこちらから、採寸や生地選びのご相談を受け付けています。
下半身の張りはスラックスの股上と太もも回りで解決する
卓球体型のスーツで、実は最も既製品との差が出るのがスラックスです。低い重心を長時間保つ競技特性から、大腿四頭筋と臀部が発達し、ウエストに合わせたサイズでは太ももで止まってしまいます。逆に太ももに合わせるとウエストがベルトで絞られ、腰まわりに大きなシワが寄ります。
この場合の基本方針は次のとおりです。
- 股上をやや深めに取る:太もも回りに必要なゆとりを、腰位置を上げることで自然に確保する。
- ヒップと太ももを別々に指定する:臀部だけが張っているのか、大腿部も太いのかで補正箇所が変わる。
- 裾はやや細めに絞る:太もも側にゆとりを持たせた分、膝下を細くしないと全体が野暮ったくなる。
ふくらはぎが太い方は、裾を絞りすぎると靴の上でシワが溜まるため、絞り幅の上限も同時に決めておきます。太もも周りの具体的な採寸のコツは太ももが太い人のスラックス選び|パツパツを防ぐ採寸のコツを参考にしてください。
稲沢の店頭で卓球経験者を採寸するときに見ている3つの点
ここからは、愛知県稲沢市の店舗で実際に卓球経験のある方を採寸する際、私たちが必ず確認している観点をお伝えします。カタログ的な体型論とは別に、判断が分かれる部分です。
1つ目は、左右差を「どこまで消すか」の合意です。左右で肩の高さや腕の太さが違う場合、数値上は完全に補正できます。しかし完全に左右差を消すと、脱いでハンガーに掛けたときに左右非対称なジャケットになり、パッと見の違和感を訴える方もいます。着用時の快適さを取るか、脱いだときの見た目を取るかは、その方の使い方次第です。日常的にジャケットを脱ぎ着する職場なら、補正はやや控えめにすることもあります。
2つ目は、現役かどうかの確認です。現役で週数回の練習を続けている方は、今後も下半身の張りが維持されます。一方、引退直後の方は半年から1年で脚まわりが細くなることが多く、その前提で作らないと「渡した数か月後にはウエストが緩い」という結果になります。ここは仕立て前に必ず伺うようにしています。
3つ目は、猫背の程度です。卓球は台に対して前傾する時間が長く、姿勢の癖が残っている方が多い競技です。姿勢を補正した木型で作るか、今の姿勢に合わせて作るかで、後ろ姿の印象が大きく変わります。個人的には、姿勢を無理に矯正する設計より、現状に合わせて背中側の余りを消したほうが、着心地も見た目も安定するケースが多いと感じています。
現役と引退後で変わる卓球体型のスーツの選び方
現役選手や指導者として動き続けている方は、可動域を最優先に考えます。具体的には、ストレッチ性のある生地を選び、アームホールを高めに設定して腕の上げ下げを軽くします。生地の選択については動きやすいストレッチスーツとは?疲れない一着をオーダーで作るが参考になります。
一方、引退して数年が経つ方は、下半身の張りが落ち着き、代わりに腹部まわりが変化していることがあります。この段階では、脚まわりの補正を減らし、ウエストの調整代を確保する設計に切り替えます。同じ「卓球体型」でも、5年経てば必要な補正はまったく別物になるということです。
アスリート体型全般に共通する考え方はアスリート体型のスーツはオーダーが正解|筋肉質を活かす一着にまとめています。
よくある質問
Q. 卓球体型ならスーツは必ずオーダーにすべきですか。
必ずというわけではありません。左右差が小さく、下半身の張りもそれほど強くない方であれば、既製品を購入して袖丈と裾丈を直すだけで十分な場合もあります。ただし、太ももで引っかかる、袖が前腕で止まるといった症状がひとつでもある場合は、既製品の補正では対応範囲を超えることが多く、オーダーのほうが結果的に費用対効果は高くなります。
Q. 利き腕側の袖だけ長さを変えると、見た目に違和感は出ませんか。
着用時にはほとんど分かりません。むしろ左右同寸で作るほうが、シャツの見え方が左右で変わって目立ちます。ただしジャケットを脱いで掛けたときには左右差が分かるため、気になる方には補正量を抑える提案もしています。どちらを優先するかは事前に伺うようにしています。
Q. 現役の間はスーツを作らないほうがよいでしょうか。
そのようなことはありません。現役中は体型が安定している期間でもあるため、むしろ作りやすいタイミングです。ポイントは、将来の体型変化を見越してウエストや脇の縫い代を多めに残しておくことです。引退後に体型が変わっても、一定範囲であればサイズ直しで対応できます。
