新郎新婦の父のスーツは、「両家で格を揃える」ことが何よりも優先されます。父親は招待する側(主催者側)の立場にあたるため、装いの格が会場の空気そのものを決めるからです。片方の父がモーニングコート、もう片方がブラックスーツという状態は、当日の写真に残り続ける形で目立ってしまいます。
この記事では、格の考え方から実務的な準備の順序までを、稲沢のオーダースーツ専門店として実際にご相談を受けている内容に沿って整理します。
まず決めるのは「両家で揃えるかどうか」
準備の第一歩は生地選びでも店選びでもありません。相手方のご家族と装いの格を擦り合わせることです。ここを飛ばして先に用意してしまい、後から作り直しになるご相談を当店でも毎年お受けします。
擦り合わせの内容はシンプルで、「モーニングコートにするか」「ブラックスーツ(略礼服)にするか」の二択です。新郎側から切り出すのが一般的ですが、順序に厳密な決まりはありません。式場のプランナーを介して確認する方法もよく使われます。
昼と夜で正装は変わる|時間帯の基本
洋装の礼装は時間帯で区別されます。昼の挙式・披露宴であれば正礼装はモーニングコート、夕方以降であれば燕尾服やタキシードが該当します。ただし現在の日本の結婚式は昼〜夕方に集中しているため、実際に検討対象になるのはモーニングコートであることがほとんどです。
一方、近年は両家の合意のうえでブラックスーツ(略礼服)を選ぶケースも確実に増えています。家族婚や少人数の会食形式であれば、ブラックスーツで揃えるほうが場に馴染むという判断も十分に成立します。礼服そのものの考え方は礼服のオーダー完全ガイドで詳しく解説しています。
ブラックスーツを選ぶ場合の注意点
ブラックスーツを選ぶ場合、最も注意すべきは「ビジネス用の黒いスーツで代用しない」ことです。礼服の黒とビジネススーツの黒は染めの深さが違い、並んで立つと明確に色が浮きます。当日は両家の父が並ぶ場面が必ずあるため、ここは差が出やすい部分です。
また、手持ちの礼服を使う予定の方は、必ず事前に着用して確認してください。当店にご相談いただく中で最も多いのが、「10年前に作った礼服が当日入らない」というケースです。特に40代後半以降は体型が変わりやすく、ウエストだけでなく肩まわりや袖丈の感覚も変わります。体型変化への対応は40代・50代のスーツ選びが参考になります。
▶ 式まで日程が迫っている方もまずご相談ください(INFINITY TAILOR公式)
父親の装いで見られているのは「胸から上」
当日、父親が最も写真に写るのは親族集合写真と入退場の場面です。いずれも座っている時間より立っている時間、そして胸から上が写る構図が中心になります。
したがって優先すべきは、肩のラインと襟元の収まりです。肩に余りがあると、それだけで一段くたびれて見えます。逆にウエストが数センチ緩い程度は、写真ではほとんど分かりません。限られた予算と時間の中で優先順位を付けるなら、肩まわりの調整に配分するのが合理的です。
ネクタイは、昼の正礼装では白またはシルバーグレーが定番です。黒は弔事の色にあたるため避けます。ポケットチーフは白のリネンを入れておくと、写真での顔まわりが明るくなります。
準備のスケジュール|逆算すると3か月前
オーダーで用意する場合、仕立て上がりまでに一定の期間がかかります。式の3か月前には動き始めるのが安全です。両家の擦り合わせに時間がかかることもあり、生地を決める段階まで到達するのに数週間を要するケースも珍しくありません。
直前に慌てて既製品を買うと、肩や袖が合わないまま当日を迎えることになります。ご子息の結婚式は撮り直しのきかない一日なので、ここは時間を確保しておきたい部分です。
式に参列する側の装いについては結婚式のスーツはオーダーが正解?にまとめています。
兄弟・親族として参列する場合との違い
同じ親族でも、父親と兄弟では立場が異なります。父親は招待する側の代表として最も格の高い装いが求められますが、兄弟や叔父にあたる方はブラックスーツで問題ありません。むしろ父親より格上の装いになると、当日の並びで序列が崩れて見えます。
当店でも「親族として出るので父と同じモーニングを用意すべきか」というご質問をよくいただきますが、答えは基本的に不要です。ブラックスーツに白またはシルバーのネクタイを合わせれば、それで十分に整います。
なお、受付や余興など当日の役割がある方は、動く場面が増えるぶん袖丈とジャケットの前合わせを厳しめに確認しておいてください。腕を上げる動作が多いと、袖が短い一着は写真で目立ちます。
よくある質問
Q. 新婦の父と新郎の父で装いを変えるべきですか?
変える必要はなく、むしろ揃えるのが原則です。両家が並ぶ場面が多いため、格が違うと一方が浮いて見えます。事前の相談で同じ格に合わせてください。
Q. モーニングコートはレンタルでも問題ありませんか?
問題ありません。着用機会が限られる衣装なので、レンタルを選ぶ方も多数います。ただしサイズの選択肢が限られるため、肩幅や胴まわりに特徴のある方は早めに試着しておくことをおすすめします。
Q. 式の後も使える形にできますか?
ブラックスーツ(略礼服)であれば、法事などの弔事にも使えます。長く使う前提なら、光沢の少ない無地の黒を選び、体型変化に備えてウエストに調整代を残しておくと安心です。
